【ペーパー・ハウス】スペイン産の海外ドラマが世界で大人気の理由

ここでは、世界で大人気のスペインが生んだ連載ドラマ、「ペーパーハウス」を紹介します。なぜこれほどまでのヒットに繋がったのか?人気の秘密は何か?その理由を探ってみたいと思います。

ペーパー・ハウス

ペーパー・ハウス」、 スペイン語で ” La casa de papel” すなわち

「紙の家」

というタイトルの海外ドラマです。

「紙」とは「お金」のを意味し、「家」は建物を意味します。

紙のお金を印刷する場所、つまり、「中央銀行」を意味しています。

現在、Netflixにて配信されています。

このドラマのテーマは、スペインの中央銀行の強盗です。今時は、オンライン銀行やビットコインの時代ですが、このドラマのパート1と2では、「紙幣」を盗みます。

そして、パート3と4では、中央銀行の保有する「金」を盗みます。

ストーリーの中には多くの興味深い人間の心理学が、とてもリアルに描かれているのが、特徴の一つです。

ハラハラするアクションと、深い人間の心理、男女の複雑な関係が組み合わさった、見るものを飽きさせない素晴らしい作品です。

今日、アメリカ発のドラマが多勢を占める中で、「ペーパー・ハウス」は、スペイン、マドリッド発です。ヨーロッパの歴史もストーリの背景にあり、アメリカのハリウッドでは作ることができない要素を持ち合わせている点も、魅力のひとつです。

作品の当初

ペーパー・ハウス:ロゴ

作品は、当初からグローバルな視聴者を想定して、ストーリーが練られたようです。

しかし、2017年の5月から実際にテレビ放送が始まると、スペイン国内での視聴率はあまり上がらず、放送回数を経るに連れて、視聴率は下がっていったそうです。

そして、パート2の最後が放送された2017年の11月をもって、作品が打ち切りとなることは製作側の誰の目にも明らかでした。

Netflix 参入

そんな微妙なタイミングで、2017年の終盤にかけてネットフリックスが、放送権を獲得します。

ネットフリックスは、スペインで実際に放送されたオリジナルのバージョンを少しカットし、22 のエピソードへと編集します。

そして、スペインでの放送が終了した翌月の、2017年12月20日から、ネットフリックスで配信が始まります。

このネットフリックスでの配信をきっかけに、「ペーパー・ハウス」は世界中で多くのファンを獲得して行くのです。

特に、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、イタリア語などのラテン語圏の国々の人々からヒットが始まります。

口コミ

私にとって、「ペーパー・ハウス」が最初にネットフリックス上で、宣伝用のトレーラーを少しみた時、全く興味を持ちませんでした。

何か、皆赤い洋服をきて、変な格好して、私にとっては、つまらなそうなドラマという印象でした。

そんな時に、たまたま海外の知人と、おすすめドラマの話をしていた時に、「ペーパー・ハウス」が面白いと勧められました。

その知人も、ラテン語圏の国からきた人です。

このように、「ペーパー・ハウス」は、大きな宣伝活動を通じで知名度をあげたのではなく、むしろ、ラテン系の人々の口コミをきっかけに拡大していったようです。

ファン

例えば、ブラジル出身の超有名サッカー選手、ネイマール選手もこの作品のファンだそうで、シーズン3、4ではゲスト出演されています。

どのような役柄でゲスト出演されているかは、是非ドラマを見て確かめてみてください。

イタリアの修道院での修道士としての役です。シーズン3のエピソード6で最初にみたときは、ん?この顔知っているような、、、でも誰だ?

というように印象には残りましたが、あまり気に留めませんでした。エピソード8のオープニングで実際にネイマール選手だと良く分かります。

詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。

キャスト

このドラマでは、銀行強盗グループの物語で、それぞれのキャラクターが独特に設定され、俳優女優ともにキャストたちの役割が特徴的です。

キャラクター性格、そして役割がとても際立っているのも、このドラマの大きな特徴と言えます。

監督さんは、

「視聴者があるドラマが好きになるときは、そのドラマ全体が好きになるのではない。むしろ、視聴者がある特定のキャラクターに恋をすることで、そのドラマのファンになるのだ。」

という自説をお持ちです。

そのため、このドラマを好きになるひとは、きっとこのドラマで好きなキャラクターがあるはずです。

キャストについては、こちらでまとめてありますので、参考にしてみてください。

ストーリの設定

ペーパハウス「東京」役 ウルスラ・コルベロ Úrsula Corberó
ペーパハウス「東京」役 ウルスラ・コルベロ Úrsula Corberó

ペーパー・ハウスの主人公は ウルスラ・コルベロ(Úrsula Corberó) さんが務める、「東京」というあだ名の女性です。

注)このドラマの主人公達、すなわち銀行強盗グループのメンバーにはそれぞれ、都市にちなんだあだ名がつきますので、ここでは都市と区別して、あだ名だと分かるよう、「」をつけます。

「東京」は若い頃から強盗を繰り返す不良少女で、ある日、強盗の際にトラブルとなり、人殺しをしてしまいます。

警察の追跡から逃亡する中、「教授」と呼ばれるミステリアスな男性から、史上最大の銀行強盗を計画組織へとリクルートされます。

強盗グループは「東京」を含め合計8人。彼らは「教授」の計画する緻密な強盗計画を、5ヶ月間かけて学ぶのです。

強盗の真の目的

「教授」の計画する強盗計画は非常に緻密で、プランA、プランB、プランC、など多くのシナリオが準備されます。

そして、この強盗計画の目的は、実はお金だけではありません。

真の目的は、「レジスタンス」つまり「体制への抵抗」なのです。

この銀行強盗事件を通じ、人質も含め世論が全体が警察や政府のやり方を非難し、世論が強盗犯の味方となることが最終的な目的です。

人々から共感を得て、世論を味方につけることが目的なため、教授の立てる計画の背後には、様々な人間や大衆の心理が分析されているのです。

ドラマがラテンアメリカやアラブ、アフリカでヒットした理由として、国が混乱する中で、「体制への抵抗」や「権力への抵抗」という概念とドラマを重ね合わせて、人々が見ることができた点をあげることができると言われています。

シンボル

赤いジャンプスーツ

ドラマでは、赤いジャンプスーツもシンボルとして使われます。「赤」という色を多用することで、見ている側を不安にし、ドラマのハラハラドキドキ感が一層に高まります。

また、この赤という色を際立たせるために、撮影場内は照明を暗くして撮影がされたそうです。

どういうタイプの赤色を選ぶかについて、実際に様々な異なるトーンの赤と素材について実験的に撮影されてから、最終的に今の赤いろが選ばれたそうです。

マスク

ペーパー・ハウス ドラマのモチーフ サルバドール・デリ:マスク

ドラマでは、犯人グループと人質の区別を隠すため、赤いスーツとともに、スペインの芸術家「サルバドール・デリ」のマスクが用いられます。

ただし、ドラマの撮影グループは、スペインのサルバドール・デリ財団へ、マスク使用の許可を取らなかったそうです。ドラマが打ち切りになりそうなシーズン1と2までは問題なさそうですが、

ドラマがあまりにも有名になってしまった今日、デリのマスクはドラマのアイコンの一つとしてなくてはならない存在です。

ドラマの撮影グループは事前に財団へ許可を得るべきだった、と非難を受けているそうです。

Bella Ciao (ベッラ チャオ)

さらに、このドラマのテーマを私たち視聴者の感情とうまく結びつけるために、いくつかのシンボル化もされています。

その一つが、あの歌、Bella Ciao (ベッラ チャオ)です。「美しい恋人よさようなら」という意味の、ナチズムへの抵抗するイタリアのパルチザン抵抗軍のテーマ曲です。

強盗の目的が、体制に対するレジスタンスであることのシンボルとして、この歌が使われ、このメロディーが持つノスタルジックな歌詞とともに、私たちの感情に入り込むのです。

そして、ドラマを見ている私たちも、あらかも対抗勢力の戦士の一員であるかのような気分で、この歌を口ずさみ、ドラマへ感情移入をしていくのです。

オリジナルのソングは、こちらから聴くことができます。

社会現象

ペイパー・ハウス コスプレの様子 2019年ギリシャにて

ドラマは、世界で一種の社会現象を起こしました。リオのカーニバルで、これらのモチーフを身に付けた人々のパレードも登場します。

UAEのサッカースタジアムでは、観客席に巨大なモチーフが登場します。

それ以外にも、実際の強盗で使われたり、逆に難民が救済されたときに、ベッラ・チャオが歌われたりなどしました。

その他、コスプレとしても人気の衣装となります。

男女の恋愛

ドラマの中には、様々な男女関係が登場します。

この恋愛関係のどれもが、「教授」の計画を全て台無しにし、強盗計画を失敗に終わらせてしまう可能性を秘めています。

計画はとても綿密ですが、恋愛関係までは、想定されていません。

そもそも、誰と誰が恋愛関係となるかは、計画が不可能とも言えます。

また、トーキョーがナレーションでも言うように、

この計画が台無しになる理由が愛だったら、それは良い理由ではないだろうか。

こんなスピリットの中で話が展開するので、とてもハラハラするドラマなのです。

アクションと昼メロドラマの融合

ドラマの製作者は、

「アクションドラマのハラハラと、昼メロドラマの恋愛を融合させて、より面白いドラマを作ることがこのドラマの狙いの一つである」

述べています。

ドラマでは、多くの恋愛関係が出てきますので、実際に見てぜひ楽しんでください。

特に注目されている恋愛関係は、

1)トーキョーとリオ

2)教授と捜査官のラケル

3)デンバー、モニカ、アートゥーロの三角関係

などです。

恋愛の例

以下では、3番目の強盗犯と人質の恋愛を紹介します。

この強盗犯と人質の恋愛は、最初とても盛り上がりますが、その後、これは真の愛ではない、単なる「ストックホルム症候群」だとしてふたりは苦悩します。

「ストックホルム症候群ならば、それは本当に真の恋愛感情とは言えないのでしょうか?」

というような疑問を問いかけるシーンでもあり、とても興味深い視点の一つです。

ストックホルム症候群とは?

ストックホルム症候群とは、1973年8月23日、スウェーデンの首都ストックホルム、ノルマルム広場 (Norrmalmstorg )にあるクレジット銀行で起きた銀行強盗事件が元になっています。

犯人は、4人の人質達と共に6日間立てこもりますが、犯行は失敗に終わり、警察側の勝利となります。

しかし裁判となると、4人の人質達は皆、犯人を擁護し、犯人達に不利となるような証言を拒否しました。

通常、人質ならば犯人に対して恐怖感を抱くはずです。しかし、この事件ではその逆で、愛情を抱いていたのです。

その後、ストックホルム症候群が次のように定義されます:

  • 人質達は誘拐犯に対し、良い感情を抱く
  • 人質と誘拐犯は、事件前は全く関係がない
  • 人質達は、警察や政府に対する協力を拒絶する
  • 人質達は、犯人達が脅威であると考えることを止め、逆に、犯人も同じ価値観を持った人間であると考え、犯人の人間性を重んじる。

このドラマでも、「デンバー」と「モニカ」の間にこのような感情が生まれます。

デンバーの性格

ペーパーハウス デンヴァー役 ハイメ ロレンテ(Jaime Lorente)
ペーパーハウス デンヴァー役 ハイメ ロレンテ(Jaime Lorente)

デンヴァー役は、俳優のハイメ ロレンテ(Jaime Lorente)さんです。

「デンバー」の性格は、生まれも育ちも最悪で、ケンカっ早い性格である反面、協調性がります。

パーティー好きで、彼の周りには、なぜか人が集まるようなタイプです。

一見悪ガキなのですが、人に優しい一面があり、憎めない、結構いい奴というキャラクターです。

モニカの性格

ペーパーハウス モニカ役 エステール アセボ (Esther Acebo)
ペーパーハウス モニカ役 エステール アセボ (Esther Acebo)

モニカ役は、女優のエステール アセボ (Esther Acebo)さんです。

モニカは、人の言い成りになりやすく、人に流されやすいタイプです。

自分が幸せになりたいと思っているのに対し、なぜか、大事な時に、自分はいつも間違えた選択をしてしまうと、後悔の多い人生を送っています。

自分に自信が持てないのです。

職業は、中央銀行の秘書なので、小さな頃から、コツコツと真面目に生きてきたタイプのようです。

ある意味で、ドラマの主人公、人に流されることなく我が道を行くタイプ「東京」とは、対照的な性格のキャラクターともいえます。

デンバーとモニカの関係

教授の計画は、人質や世論から、犯行グループが共感を得ることです。

そのため、そもそも人質と犯人の間で人間関係が生まれやすい設定でもあります。

この設定の中で、ドラマでは、ストックホルム症候群がとてもリアルに再現されています。

この二人の行き先はどうなるのでしょうか?

楽しみですね。

まとめ

いかがでしたか?

ここでは、Netflixで連載されている、スペイン発の傑作ドラマを紹介しました。

ドラマはスリル満点で、一度見たら中毒になってしまうかもしれません。

様々な角度から楽しめる、おすすめ連載ドラマです。

ロケ地

シーズン1と2では、ドラマが撮影されたローケーションが、ストーリ中でとてもリアルに描かれています。こちらの記事も参考にしてください。